マライア・キャリーと同じ素質を感じる―シンガーMeg Blessが語る、NYで学んだ音楽

Meg Bless :小学生の頃から長女の影響で歌に興味を持ち始め、高校も音楽を学ぶ為に音楽専攻を選択し、学校以外でもボイストレーニングコーチをつけて本格的に音楽に打ち込んだ。そして当時のボイストレーニングコーチから「本気で歌をやりたいならニューヨークに行け!」の一言で卒業後ニューヨークに渡米することを決意。そして2009年に渡米し、グループで2010年6月マクドナルドゴスペルフェスト優勝、アポロシアターアマチュアナイトにゲスト出演などの経歴を持つ。

彼女がニューヨークで歌を歌う&学ぶ事で気付いた、ニューヨークでシンガーとして行く為に必要な音楽の知識とはなんなのか?ニューヨークで経験したことと、これからニューヨークでシンガーとして活動する人の為になるポイントを伺いました。

すべての始まりは姉からの影響だった

ー 今日はよろしくお願いします!では、入りは一般的な質問から…歌はいつからやられていますか?

Meg:小学校1年生の時に12歳離れた長女がたまたま流したPUFFYの曲を聞いた時に歌の魅力になぜか取り憑かれましたね。この経験がきっかけに音楽に興味を持って、暇さえあれば歌を歌っていました。もしかしたら小学校や中学や高校の時の方が今より現実を見てない&音楽に対して無知なのもあって「シンガーで絶対ご飯を食べてやる!」って本気で思っていましたね。

ー そんな気持ちがあったから高校は音楽専攻へ?

Meg:そうなんですよね。音楽専攻の学校に入学し、歌だけでなく音楽について勉強したり、放課後もボイストレーニングに行ったりしていました。高校三年生の受験シーズンでは就職する気は全くなくて、周りは大学受験でざわざわしてて「めぐ大丈夫?」とか言われてましたけど、心の中で「絶対歌で成功して見返してやる!」と思って、ひたすら歌っていました。

ー だけど一大決心ですよね!ニューヨーク留学って!なんでニューヨークにいこうと思ったのですが?

Meg:高校2年生の時に高校卒業後は音楽の専門学校にいこうとしていたのですが、ボイストレーニングの先生に「本気で歌をやりたいならニューヨークに行け!結局専門学校にかかる学費、約350万をニューヨークで使ったほうがいい」と言われたのですが、高校2年生だったのもあり当時は軽く聞き流す程度でした。でもやっぱり高校3年生のときの三者面談で先生と話をする中で、本当にニューヨークに留学をしよう!と決めました。高校卒業後は留学の事を考えて1年間英会話専門学校で本気で勉強しながら、バイトを掛け持ちして留学の為のお金を作っていました。

ー なんで英会話?現地で学べばよかったのではないですか?

Meg:実際、留学してすぐレッスンを受けても先生が何を言ってるか理解できなかったら行く意味がないし、オーディションを受けるにしても審査員が何を求めているかわからなかったら、それに答えれないと思ったから英会話の学校に行きました。あとは本当に勉強が苦手で中学生英語からやり直さないといけないレベルだったので英会話の学校に行ったのは正解だったと思います。もし中学生レベルの英語が話せていたら高校卒業後すぐニューヨークに行っていたかもしれませんね。

実際ニューヨークに渡米して気付いた事

ー なるほど。実際にニューヨーク留学を決めてから渡米までの間はどうでしたか?

Meg:ニューヨークに知り合いがいなかったのもあったので、留学するだけでも苦労しました。とりあえず留学センターに留学準備は全部頼んで、貯金も英会話を勉強していた1年で100万ほど貯めましたが、残高証明はもっと必要と言われたので親にサポートをしてもらうということで親の残高証明を出しました。留学はスムーズになんとか進んだのですが、音楽関係の情報を収集するのに本当に苦労しました。

ー これだけインターネットが普及してて、大都会ニューヨーク!音楽関連の情報を収集するのに苦労したのですか?

Meg:苦労しましたよ。例えばレッスン情報やオーディション情報をどうやって見つけたらいいのか、インターネットを使ってかなり調べたのですが見つからなかったです。けど、私の場合はラッキーでした。ニューヨークに渡米して始めは語学学校に通ったのですが、たまたまクラスメイトが「ゴスペル歌ってるよ!」って教えてくれた事をきっかけに私もゴスペルワークショップに参加する事になりました。紹介してもらったゴスペルグループでは2年間歌いましたが、宗教的な問題を感じて行かなくなりました。

ー 宗教的な問題?ゴスペルって誰でも歌えるものなんじゃないのですか?

Meg:私もそう思って渡米しましたが、ゴスペルはキリスト教徒が歌うものです。日本に住んでいる時は宗教についてそこまで深く考えた事はなかったのですが、ニューヨークに住んでから宗教について考える機会が増えました。だって日本はニューヨークみたいに文化や宗教が入り混じっていないじゃないですか?ですが、ゴスペルを歌っている方々は本当に神様を信じているので、キリスト教徒でない私が「ハレルヤ〜」と歌っているのにだんだん違和感を感じてきました。キリスト教徒の方にも失礼だと思う気持ちにもなりましたね。ゴスペルを歌いたいからって簡単にキリスト教徒になっちゃう人もいるのですが、そんな人ほど宗教の本質を理解していないまま、ゴスペルを歌いたいというだけで宗教に入っちゃう人も少なくないですよ。

ー なるほどね。ちょっと話を戻すけど留学してからの始めの1年はどうでしたか?

Meg:ゴスペルワークショップに行き始めたことがきっかけで音楽関連の情報はたくさん見つけましたし、レッスン情報なども見つけることが出来ました。他にもコンテストはオンラインで申し込み出来る物もあって、色々申し込んで挑戦しました。アマチュアナイトも挑戦しましたが結果は出せませんでした。そんなこんなで1年が経ってしまって、最初は1年しかニューヨークにいないつもりでビザも申請していたので1年頑張ったら帰る予定だったのですが…色々ありまして日本に帰れなくなりました。

ー なにか事件があったんですか?

Meg:悪い事件じゃないんですけどね!!ニューヨークに来て半年くらいしてグループでマクドナルドゴスペルフェストという全米最大のゴスペルの大会に出場して、なんと優勝したんです!それだけでなく、この優勝がきっかけで、帰国する1日前にアポロシアターでのゲスト出演のオファーを頂いたんです!もう帰国する気満々だったのに帰れなくなってしまったんです。(笑)昔からアポロシアターのアマチュアナイトに出場することは夢だったので、かなり嬉しかったですね!

ー だけどビザ1年だったんですよね?ビザ切れたら大変じゃないですか?

Meg:なので、一回日本に帰ってビザの再申請をしました。そしてニューヨークに戻ってきて語学学校からブルックリンにある音楽学校に入学してジャズボーカル科を専攻しました。ブルックリンの音楽学校で学んだ2年間は本当に大きかったです。シンガーとは歌うことだけじゃないって学びました。

ー 歌を歌う意外に何か学ぶことって何かあるんですか?

Meg:ジャズをベースにした音楽理論やポピュラーミュージックの歴史、アンサンブルやトラックの作り方も勉強しました。私はR&Bやジャズを歌っているのですが、ニューヨークに来るまではクラブで音源を流して歌うことがほとんどでした。しかしニューヨークではジャンル関係なく、歌うときはほぼ毎回生バンド!J-POPはどちらかと言えばコード進行がシンプルですよね。R&Bや特にジャズはコード進行がもっと複雑で、その時の気分でバンドメンバーと共に毎回違うパフォーマンスを楽しみます。その時のバンドメンバーとの意思疎通をする為にも音楽理論などの知識は絶対に必要です。実際にブルックリンの音楽の先生に「基本的にバンドの人たちはシンガーよりも知識があるから、シンガーはバカにされてる。シンガーがリードして、どういうふうに歌いたいのか伝えたないといけないし、ちゃんと音楽理論を勉強しないさい!」と4年以上今でも言われ続けています。

ー そんなに音楽理論って大切なんですね。実際他の日本人シンガーってどうなの?

Meg:私が思うにシンガーとして渡米する人には2つのタイプがいると思います。1つは「ニューヨークで実績をつけて、日本で音楽活動をする人」と、もう1つは「ニューヨークで長く音楽活動をする人」。私は後者なのですが、もし前者ならアポロシアターのアマチュアナイトに出場しただけで日本では特別扱いされますが、後者の場合ほぼ0に近いくらいの効果しかありません。実際アメリカ人にアポロシアターのアマチュアナイトで優勝したと伝えたとしても「へー、すごいね」という程度で、アメリカではアポロシアターで優勝しても仕事にはそこまで繋がらないです。しかも日本人の方で勘違いされてる人が多いんですが、アマチュアナイトは2月頃から11月頃まで毎週水曜日に開催されていて、11月に年間の優勝者が決まり、10,000ドル(約120万円)が賞金としてもらえます。だからその週に勝ち抜いただけは本当は優勝したとは言えないんですが、メディアではよく「○○さんアマチュアナイトで優勝!」とか言ってますよね。まぁ言葉のトリックですね。(笑)

ー なるほどね。あのマイケルジャクソンを生んだアポロシアターでもそれくらいの効果しかないんだ。じゃあ、どうすれば仕事に繋がるのですか?

Meg:例えばアメリカで有名なSo You Think You Can Danceという番組では、優勝するとその後仕事が貰えることが多いみたいです。ですが、仕事をするならソーシャルセキュリティーナンバーが必要なので学生は無理ですね。

アメリカン・アイドルのダンス版といわれるこの番組は19エンタテイメントとディック・クラーク・プロダクションが製作している。シーズンは春にオーディションから始まり、アメリカン・アイドルが終わる5月下旬から放送が開始される。基本的にはアメリカン・アイドルと同じ。ただし、地区オーディションで合格するとベガス予選(プラネット・ハリウッド)に進み、男女10名ずつがファイナル進出する。そこから毎週規定の課題に沿って、ペアでダンスパフォーマンスを行い、毎週男女1名ずつ脱落し、優勝者を決める。ファイナルの収録はハリウッドのCBSテレビジョンシティで行われる

ー アメリカン・アイドル…始めて聞きました!すごい人気の番組なんですね!Megさんは出演された事はあるんですか?あれば是非歌声を聞いてみたいです。

Meg:私はビザのステータスの問題もあり、まだ挑戦できていません。Youtubeビデオを公開しているので是非見てくださいね!

ニューヨークで活動して知った面白い話

ー 色々聞いて仕事としてシンガーをやるというのは意外に難しいって事は理解できました。ちょっと話を変えてニューヨークで路上ライブとかやったことはありますか?タイムズスクエアとかユニオンスクエアとかよくライブしてる人みますけど。

Meg:あります。だけど、タイムズスクエアとかユニオンスクエアとかで昼間からやってる人はパフォーマンスをする為の許可証を持っているんです。この許可証がないと本当はパフォーマンスはしてはいけません。ですが、夜の11時をすぎたころからパフォーマーもいなくなるのでパフォーマンスすることが可能です!

ー 許可書ないのに大丈夫なの?

Meg:実際法律ではダメですよ!と言われていますが、自由な表現を認められているアメリカならではかもしれませんが、周りの迷惑になってなければ問題なくパフォーマンス出来ます。社会性もあると思います。パフォーマンス途中で警察も笑顔で手を振ってくれたりすることもあります。

ー なんか面白いですね!ニューヨークっぽい!色々話しをする中で、Megさんは小学校から高校まではシンガーとしてCDを売って音楽活動をしたいと言っていましたが、今実際色々ニューヨークで活動してみて夢は変わりましたか?

Meg:たしかに昔は歌手デビューしてCDを出してご飯食べるのが夢でしたが、ニューヨークに来て音楽を学び、本場の音楽を聞いて、夢が変わりましたね。今年からまた音楽関係の大学に入学しもっと音楽について勉強をして、自信をもって「私はシンガーです」と言える人間にまずはなりたいです。その後iTunesに音楽を配信したり、将来的には教えたりもしたいですね。

ー 今でもシンガーじゃないですか?

Meg:ニューヨークに来て本当に感じるのが音楽そのものの知識も知らないまま「音楽やってます」という人がたくさんいるということです。本人は気付いてないかもしれませんが、演奏してくれるバンドの人やコンテストの審査員は「この人は真のミュージシャンではないな」と見破っています。私は本気でニューヨークでシンガーでやってきたいからこそ音楽の知識をもっと養いたいし、歌のレッスンは1時間165ドルのレッスンを受けています。

ー 1時間165ドル?すごいですね…その先生は教えるのがやっぱり上手いんですか?

Meg:多くの素晴らしいミュージシャンとお仕事をされていて、アリシアキーズのアレンジをされたこともあるそうです。その先生に前「あなたはホイットニー・ヒューストンやマライア・キャリーと同じ素質を持ってる。あとはそれを磨くかどうかで全てが変わってくるから頑張りなさい」と言われて、プレッシャーでもありましたが、今以上に頑張ろうと思いました。

ー なるほど。今まで色々伺いましたが、Megさんの人生を変えた人を教えてもらってもいいですか?

Meg:人生を大きく変えた人ですか…高校時代に「ニューヨークに行きなさい!」と背中を押してくれた日本の先生との出会いは大きかったです。あの時は軽い気持ちで留学した部分もありましたが、先生が私の才能と生き方を考えて「ニューヨークに行きなさい!」と言ってくれたのは嬉しかったです。もちろん今でも連絡とってますし、あの先生に出会ってなければ私の武器になってる高音も出せなかったと思います。当時高音を出すのが苦手だった私に、綺麗な高音が出せるように教えてくれたのが、この先生です。

ー なるほど。その先生がMegさんの人生を大きく変えたのは伝わりました。ではMegさんが実際にニューヨークに来て、人生が変わった!と感じた瞬間はいつですか?

Meg:難しい質問ですね…やっぱりマクドナルドゴスペルフェストで優勝して、アポロシアターにゲスト出演した時かな。あれがなかったら帰国してましたからね。あとは、その後にブルックリンの音楽学校で学んだことは大きいです。

ー 色々ありがとうございました!最後にこれからニューヨークでシンガーとして活動しよう!と思ってる人に一言いただけますか?

Meg:ニューヨークでシンガーとしてやっていくのは本当にイメージ以上に大変です。まずは自分自身が将来の拠点を日本にするのかニューヨークにするのか考えたほうがいいです。もし前者なら短期間留学してニューヨークで色々なコンテストを受けて、賞を受賞して日本でその名前を上手く使ってください。ですが、ニューヨークで活動したいならある程度の音楽的知識がないと難しいと私は考えています。音楽を勉強することは真剣にニューヨークで音楽をやっていこうとしてる人なら人種関係なく誰もが通る道なんです。あと留学するタイミングとしては色々な人に「ニューヨークでやったほうがいいと思うよ!」と周りが認めるくらいのレベルならすぐにでも渡米した来た方がいいんじゃないですか?その時は留学ではなく観光でも問題ないです。とりあえずニューヨークに来て、コンテストに出たり、オープンマイクで歌ったりしてニューヨークを感じて下さい。あと事前にYOUTUBEなどに自分自身の歌をアップするのは大切だと思います。カバーでも問題ないです。ジャスティンビーバーはYOTUBEで歌をアップしてスカウトされてデビューしたのは有名な話ですが、そんな夢みたいな事も、可能性としてはあり得ます。なんでもチャレンジしたほうがいいですね!