人の幸せを作るツールとしてメイクをするー 世界で活躍するKodo Nishimuraが語る「絶対譲れないメイクへの気持ち」とは?

Kodo Nishimura:ニューヨークを拠点にミスユニバース世界大会、Nylon, Esquire, Men’s Healthなどいろいろな雑誌を始め、テレビやファッションショーなど様々な方面でメイクされています。たまたまルームメイトにメイクをしてあげたところ、彼女がとても喜び、自信が持てるようになったことがきっかけとなり、みんなに自信をつけてあげたいという気持ちからメイクを勉強し始め、今では世界的にメイクアップアーティストとして活動。

彼の「人を笑顔にするためのメイク」とは?そしてその強い気持ちがあったからこそ掴んだチャンスとは?Kodoさんがニューヨークで経験したこと、大切にしていることなどのポイントを伺いました。

きっかけはルームメイトのメイクを手伝った事

ー 今日はよろしくお願いします!では、入りは一般的な質問から。メイクをしようと思ったきっかけはなんですか?

Kodo:高校卒業後、ボストンに留学をしました。そのときのルームメイトが身だしなみのためだけに簡単にということからか、鏡を見ないでメイクをしていたんです。その光景をみて、「ちょっとメイクしてあげようか?」と声をかけました。アイライナーとマスカラだけのメイクでしたが、その子も自分も驚くくらいの大変身。彼女が見違えるほど美しくなったんです。それ以来、彼女は外見にも内面にも自信をもつようになり、輝き始めたんです。それでわたしがもっとメイクが上手くなれば、周りの人たちをもっと美しくして喜ばせてあげられるのでは、と思うようになりました。

ー そもそもアメリカ留学に興味をもったきっかけはなんだったんですか?

Kodo:中学生の時に、母に誘われて「プリティプリンセス」という映画を観に行ったんです。 主人公はアン・ハサウェイが演じる、ドジでダサくていじめられている女の子なんですが、ジュリー・アンドリュース演じる女王様に、実は彼女は一国の王女だということを告げられます。女王様に正しい自己表現の方法を教えられ、最終的には気品漂う王女様に成長するコメディーシンデレラストーリーです。最後にはそれまで主張できなかった自分なりの考えをしっかり話し、みんなが尊敬の眼差しをもって評価してくれていました。そのときにアメリカなら自分らしくいられる、そしてそれが評価してもらえるのではないか?と感じアメリカに興味を持ちました。

『プリティ・プリンセス』(原題: The Princess Diaries)は、2001年に公開されたアメリカ合衆国の映画。メグ・キャボットの『プリンセス・ダイアリー』を原作とする。プリティシリーズではない。ある日突然、自分が高貴な身分の出自であることを明かされた、ごく普通の女子高生を主人公にしたシンデレラストーリー。また2004年には、続編である『プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング』も製作された。

ー その気持ちがあってもアメリカでは英語を話さないといけないじゃないですか?英語への不安はなかったのですか?

Kodo:最初は英語がとても苦手でした。でも映画のサントラを聞いて一緒に歌ったり、英会話学校で先生と仲良くなり楽しんで勉強できました。でも英語自体に興味があったわけでなく、コミュニケーションをしてそこから違う文化や価値観が理解できることに興味がありました。アメリカに留学してからはスペイン語の勉強も始め、さらに多くの人と仲良くなるきっかけになっています。違う言葉を話す相手と出会った時に、その人の話す言葉を少しでも知っているとすぐに仲良くなれることがとても多いのです。わたしは人と仲良くなれるという楽しみを見出して、語学の勉強を楽しんでいます。

ー そこからどのようにしてメイクに繋がったのですか?
Kodo:ボストンの短大を卒業したあと、ニューヨークの芸術大学、パーソンズ大学に入学しました。3年生の時に選択科目で、ファッションフォトのクラスをとりました。そのときから自分の撮るモデルさんは自分でメイクをしていたんです。あるとき先輩の生徒さんの撮影のときに、メイクさんがドタキャン。わたしが代わりにメイクをしたんですが、そのメイクがとても気に入ってもらえて、その時以来メイクさんとして呼んでもらうようになりました。のちにインターンシップを探している時にプロのメイクさんのアシスタントとなり本格的に勉強を始めました。

ミスユニバースのメイクを担当

ー 最初にアシスタントについたメイクさんはどんなかたですか?

Kodo:高橋優子さんという日本人のアーティストです。彼女はミスユニバースで日本の代表が優勝した時に、すばらしいメイクをされていました。日本人の顔を何か他のものに変えるわけではなく、エギゾチックで清楚な顔を生かしたゴージャスで品のある作風でした。わたしの目指す新しい憧れを表してくれたメイクさんでした。

— ミスユニバースの仕事はどのようにして始めたのですか?

Kodo: はじめは優子さんのチームとして参加させてもらいました。アシスタントからはじめましたが、今では一人のアーティストとして番組の司会者やプレジデントのメイクもさせていただいています。開催地にて3週間ほど泊まりがけで働くので、世界のプロの人たちと仲良くなれるだけでなく、各国の生きた情勢や文化を聞くことができるのですごく勉強になります。

大会は世界各国の都市で開催され、世界80か国以上の代表が参加して世界一の栄冠を競い合う美の祭典となっている。また、ミス・ワールド、ミス・インターナショナルと合わせて世界3大ミスコンテストとも呼ばれ[1]、世界的に知名度の高いミス・コンテストの1つである。

ー 仕事でこだわっていることはありますか?

Kodo:ファインアートを勉強したので、技術だけではなく、意味のある、また心のこもった作品作りを心がけています。アーティストが何を表現したいかを理解してメイクするのと、わからないでただするのとでは出来栄えが変わると思います。例えば、一つの歌を歌うとします。楽譜は読めても知らない歌を淡々と歌うよりは、知っている歌、その歌のことを少しでも多く理解できている歌ならさらに上手に歌えると思います。メイクの仕事をするときもルックの要望を聞くだけではなく、どうしてそのルックなのか?洋服やヘアーはなんなのか?メイクの目的は何か?などを聞くようにして、できる限り自分も納得ができた上で仕事をするようにしています。そうすることによってさらに心のこもった仕事ができると思います。技術だけではなく、綺麗にしてあげたい、ここを目指しているんだという気持ちの伝わる作品作りを心がけています。

ー これからはどのような活動をされたいと思っていますか?

Kodo:雑誌やテレビに出る方のメイクだけでなく、どんな方でも手軽に一流のメイクに触れて、メイクの可能性を知っていただける環境を作りたいと思っています。これまでにアメリカ、日本においてメイクのセミナーの開催以外にも、お医者さんやマクロビオティックや精進料理のカフェとコラボーレーションしたイベントなどを行いました。外側も内側も綺麗になるお手伝いができたらと思います。また今お坊さんとしての修行をしているので、自分にしかない特別な価値観を持ってメイクしていきたいと思っています。例えばみんなが幸せな気持ちでお互いに思いやりをもって生活できるようなお手伝いができればと思います。

ー Kodoさんのようにニューヨークでメイクを仕事にしたい!と思っている方もいると思いますが、成功の秘訣はなんだと思いますか?

Kodo:自分ではまだまだ成功したとは思っていませんが、あえていえば熱意だと思います。喋らなくても熱意がある人はそれが伝わると思うし、仕事の風景を見れば気持ちが入っているかどうかはわかると思います。わたしがアシスタントを希望していた時もボスには熱意が伝わったと後で教えていただき、熱意がある人にメイクを教えたいと思ったと言われ、嬉しかったです。常に努力のスイッチをオンでいるのは本当に難しいことだと思いますが、ポジティブな目的があれば楽しんで努力できると思います。例えばわたしがメイクをしてあげた人が幸せになってくれれば、その分の喜びが自分にも跳ね返ってきます。一緒に嬉しくなれることに満足感とやりがいを感じます。その人たちのためにもっと努力して、もっと上手になって、世界一の美しいメイクをしてあげたいといつも思っています。そんな理由があるからこそ自然と向上する気持ちが湧いてきて、上達することを心から楽しめます。

ー いろいろ質問に答えていただき、ありがとうございました。では最後に今からニューヨークで挑戦したいと考えているかたにアドバイスをいただけますか?

Kodoさん:わたしは同じことを何度も繰り返すことが大事だと思います。毎回の結果をできるだけよくするように努力することによって、実力や技術が目に見えて 上達できると思います。例えば、メイクであれば仲の良い人に何十回もメイクをさせてもらうと、なにが一番似合うか、何が良くて何が悪いのかが見えてきます。もし違うモデルさんにメイクをしていたらファンデーションの色から考えないといけないところが、同じモデルさんであったらファンデーションの塗り方、 量、また違う種類のファンデーションなどを試すことができます。二回目、三回目と回を重ねると、必然的に考えられる範囲が深まります。違う例で話せば、砂の城を作る場合、違う海岸で作ればまずは作る場所探しから、砂の性質や気温も違うかもしれないので肝心の城作りに取り掛かるまでに少し手間がかかってしまいます。一度の作品作りにおいて、時間や集中力が限られていると思うので、過去に同じ経験があれば次回からはさらに細部や深い場所にまでこだわれます。たくさんのモデルさんをメイクすることももちろん大切ですが、身近にいるかたのメイクを重ねることで、 洗練されたメイクを勉強する近道になると思います。